居飛車では、相手が振り飛車か居飛車かによって、適した囲いが大きく変わります。相手が振り飛車なら右辺で戦いが起きるため玉を左に逃がした囲いが有効で、相居飛車なら左辺に囲います。どちらの展開でも、基本の形を知っておくことが大切です。
舟囲い
設計思想:対振り飛車で最速で玉を飛から遠ざける
対振り飛車において居飛車側が使う、最も手軽な囲いです。核心にある考え方は「玉を相手の飛から遠い位置に移す」という一点。相手が飛を右辺(4〜8筋)に転換してくる振り飛車に対して、玉を左端(2〜3筋)へ寄せることで、飛の直接的な脅威を大きく減らせます。
金銀の連結は最低限で、特に左金は浮き駒になりやすく、耐久力より速度を重視した設計です。これ以上手をかけずそのまま攻めに転じることも、エルモ囲いや穴熊・銀冠などより堅い囲いに発展させることもできます。なお相居飛車では、玉が相手の飛の正面に近くなりやすいため適していません。
カニ囲い
設計思想:上部を金銀で覆う、相居飛車の最低限の守り
相居飛車では、お互いの飛車が縦(同じ筋)に利くため、玉の「上部(頭)」からの攻撃が最初の急所になります。カニ囲いは、その上部を金2枚・銀1枚で横並びに守る設計です。玉頭に手厚く駒を配置することで、相手の飛や角が直接玉頭を狙う攻めを防ぎます。
ただし金銀の連結は弱く、本格的な攻めを受け止める耐久力は限られます。いきなり飛を王手で打ち込まれるのも痛い形です。序盤に攻めへ集中したい・速攻したいときに選ぶ囲いです。
現代角換わり
設計思想:角の打ち込みを防ぐことを最優先にしたバランス特化の陣形
「角換わり」の戦型で現在主流になっている陣形です。右の金をあえて玉に近づけない中途半端な位置に置き、飛を最下段に下げて一段目を守るのがポイント。この配置から、符号を使って「4八金・2九飛型」と呼ばれることもあります。
互いに角を持ち駒にする角換わりの特性上、相手に角を打ち込まれる隙を作らないことを最優先に考えられた、バランス特化の陣形です。一方で耐久力はあまり高くなく、一度攻めが始まると一気に危険になりがち。一手のミスが結果に直結しやすい、緊張感のある展開になります。
中住まい
設計思想:玉自らが中央を守る、手軽で広域なバランス陣形
図はあくまで一例で、金銀など他の駒の配置は臨機応変に動かします。玉を初期位置から一歩前進(5八玉)させているのが最大のポイント。玉をここに置くことで、玉自身の力で中央の守備を強化でき、王手もかかりにくくなります。
バランスに優れ、駒を打ち込んで攻める隙も少なく、手数もかかりません。ただし一箇所が突破されると詰みまで一気に進みやすく、耐久力には期待できない点には注意が必要です。
雁木囲い
設計思想:中央に厚みを作り、全方向に柔軟に対応できる金銀の配置
ポイントは「バランスと柔軟さ」。金銀が上部に広がった形なので、上から・左から・中央での勢力争いと、どの方向にも一定の対応ができます。特徴的なのは左銀の位置で、中央に厚みを作りつつ後ろの金としっかり連結しています。この銀が雁木の要で、攻められても粘り強く抵抗し、カウンターを返しやすい構造です。
中盤までは簡単には倒れず粘り強く戦えますが、玉をガッチリ守っているわけではなく、一度攻めが刺さり始めると脆い面もあります。特定の玉位置がベストということもなく、逃げやすい・王手のかかりにくい位置を選ぶのが指しこなすコツ。受けの力をつけながら使う囲いです。
矢倉囲い
設計思想:金銀3枚で上部を厚く守る伝統の堅陣
金2枚・銀1枚を相手の居飛車に備えて玉の右から上部に集中配置し、縦からの攻めへの守備力を最大化した設計です。この上に手厚い構えが、相手の飛・角・銀・桂のコンビネーションによる上部攻略を難しくしています。ただし飛を打ち込まれるなど横からの攻めや、左端からの攻めにはそれほど強くないので警戒が必要です。
かつては相居飛車の王道とされ、非常に深く研究されプロでも多く採用されてきました。しかし近年は組み切る前に攻められるリスクが大きいと分かり、下火になりつつあります。級位者にはやや扱いが難しく、ある程度慣れてから挑戦するのがよいでしょう。
エルモ囲い
設計思想:舟囲いの弱点を金銀の連結で補う
舟囲いの発展型として近年急速に普及した、対振り飛車の新定番です。舟囲いは手軽な反面、金銀の連結が弱く横からの攻めに脆いという弱点がありました。エルモ囲いはその弱点を、金と銀を連結させる手を加えることで解消した設計。玉の下に金銀が隣り合うことで、横からの攻めへの耐久力が大きく向上します。
「玉を飛から遠ざける」という舟囲いの根本設計を引き継ぎつつ、金銀の連結という好形の原則を加えた形です。速攻重視でありながら最低限の堅さを持つ、バランスの取れた選択肢といえます。